


|
 |

和波たかよし ロンドン便りNO.2
「シューマンのヴァイオリン協奏曲」
4月27日からロンドンで、月曜日ごとに開いていた「バッハ・イザイ無伴奏作品連続演奏会」は、幸い予想以上のお客様に聴きに来ていただき、どうやら成功のうちに終了しました。今回の企画は、私の音楽生活の中でも最も大きな挑戦の一つだったと言って良い仕事でしたが、作品に託したかった私のメッセージをお客様に伝えるという意味で、ほぼ満足な結果が得られたと思っています。集まった人たちは、水を打ったように静まり返って繊細なヴァイオリンの音に耳を傾け、曲ごとに大きく暖かい拍手を送ってくれました。その積極的な反応が私の中に新たなエネルギーを呼び起こし、緊張の糸が切れることなく3回の演奏を終えることができました。聴衆との交流の素晴らしさを強く実感できたのは、大変幸せなことでした。
さて、次の演奏は今月28日、東京のサントリーホールにおける、東京シティーフィルの定期演奏会です。曲は、比較的演奏される機会の少ないシューマンのヴァイオリン協奏曲、ニ短調です。
この作品は、1992年にエイドリアン・リーパー指揮のロンドンフィルとCD録音を行い、ブラームスの協奏曲とのカップリングで日本でも発売されていますが、日本での公開演奏は初めてなのです。この曲があまり演奏されないのは、ベートーヴェンやメンデルスゾーン、ブラームスなどドイツの他のヴァイオリン協奏曲に比べて、技巧的に極めて難しく、しかも聴いた印象が地味であることが最大の理由だと考えられます。しかし、重厚なたくましさと、ロマンティックな美しさを兼ね備えた作品の雰囲気は、正にシューマンならではのものであり、深い味わいを湛えた名曲だと私は考えています。
シティーフィルとは、一昨年ヒンデミットとブラームスを、昨年はメンデルスゾーンを演奏し、これが3年連続の協演となります。そのいずれもがサントリーホールであったというのも奇遇です。気心の良くわかったオーケストラと、いつもアットホームな気持ちで演奏できるサントリーホールでシューマンを弾けるのは、大きな喜びです。さらに、今回の指揮者、飯守泰次郎氏は、桐朋学園大学での先輩に当たり、学生時代には飯守氏の指揮するオーケストラで、バルトークやヴォルフなどさまざまな作品を演奏した思い出があります。1967年には、イタリア、シエナの「アカデミア・キジアーナ」の夏期講習で共に学んだこともありましたが、協奏曲を協演するのは今回が初めてで、一緒にどんな音楽を作り上げることができるかとても楽しみにしています。
東京は、相変わらずたくさんのコンサートがひしめきあっていますが、聴いて下さった方々の心の中に1日でも長く残る爽やかな音楽をお届けしたいと願っています。
和波たかよし
|

このページの音声データ・文章・写真等、内容に関する著作権は和波たかよしに帰属します。他のメディアへの無断転載はご遠慮下さい。


 |
|