2月22日 録音を終えて

 音楽大学の春休みは長い。私は、今月に入ってから毎週の名古屋通いもなくなり、東京でのレッスンも少しずつ減って、比較的余裕のある日々を過ごしている。先月末には体調を崩したが、その後はずっと元気で、やや夜の眠りは浅いものの、まずまず快調な毎日である。

 先週は、14日から16日まで、3日連続でベートーヴェンのソナタのCD録音を行い、10曲すべての録音を終えた。今回は日程の都合で3日連続となり、体力と精神的なスタミナの維持が課題だったが、2日目にかなりの疲労を覚えたものの、何とか無事に乗り切ることができ、「10曲全部録音したんだな」と、終わった時は感無量だった。

 この10曲を美寧子と連続演奏したのは、2003年6月のこと。その経験を踏まえて今度はCD録音に挑戦したわけだが、気持ちを合わせてこうした大きな仕事に二人で取り組めたのは、本当に幸福なことであり、レコード会社やスタッフの人たちに感謝の気持ちでいっぱいである。

 私は、いろいろ頭の中で考える癖がある。今回も、レコーディングの直前になって「俺がこのベートーヴェンを録音することにはどんな意味があるんだろう」などとしょっちゅう考えていた。せっかく弾くのだから、多くの人に喜んでもらえるものを作りたいのはもちろんだが、それだけでは物足りない。今、私は多くの音楽学生を教えているが、そうした後輩たちがベートーヴェンのソナタを学ぶ時に、少しでも参考にしてもらえるような演奏を残しておきたい、という気持ちもあった。お産にも難産と安産があるように、私のCD作りはちょっとした難産だったように思う。どうも、気楽な態度でマイクの前に立つことができない。自分で勝手に厳粛な気持ちになり、勝手に堅くなってしまう。私にはそんなところがある。

 でも、今回はずっと落ち着いた気持ちで、日頃練習してきたものをかなりしっかりと出すことができた。これは何と言っても共演者である美寧子の力が大きかったし、プロデューサーの中野氏、ディレクターの永野さん、録音担当の大熊氏、ピアノ調律の鶴田氏など、長年一緒に仕事をして気心の知れたスタッフの人たちのサポートが、本当に有り難かった。

 今週は、11月に録音した3曲の編集準備として、すべての録音を聴く作業をしている。私たち演奏者とスタッフの意見を付き合わせ、編集箇所を決定するのだ。これまた疲れる仕事だが、こうして少しずつCDの完成に近づいて行く。そして、4枚組のアルバムは今年の秋に発売される予定である。

和波たかよし

 日記トップページへ戻る

ページトップへ


このページの音声データ・文章・写真等、内容に関する著作権は和波たかよしに帰属します。他のメディアへの無断転載はご遠慮下さい。