5月19日 やはり演奏は楽しい
美寧子のリサイタルから1週間が経過した。たくさんの方々にサポートしていただいて、リサイタルは無事に終わった。私は、自分が演奏する時にはできないこと、開演前のロビーで多くのお客様とお話しすることができて、とても楽しかった。「これだけの方々が美寧子の演奏を聴きに来て下さっているのだ」と実感し、それが心にしみた。もう30年近く前から何度もやっていることなのに、それが一入身にしみるのは、年のせいだろうか。
気が付くと、私は2ヶ月も本番から遠ざかっていた。やはり演奏の機会がないのは寂しい。だがそれも終わりだ。明後日は、およそ1年半ぶりに長野県の小海町で演奏する。毎年小海へ行くのを楽しみにしているのだが、昨年は町の予算がないとの理由で中止された。「次はいつ行けるのだろう」と思っているところへ、昨年末にお話しがあった。「また呼んでいただけるのか」と心底嬉しかった。
本番がなかった間に、私は基本的なさまざまなテクニックについて洗い直し、自分なりに整備した。より力を抜いた弾き方、勢いのよい弓使い、自然な姿勢や呼吸法など、練習の中で研究してみた。その成果を試す本番の機会が迫ってきたのだ。体内に快い緊張が満ちてくる。なんとも素晴らしいフィーリングである。
前回小海で弾いたのは、中越地震の日だった。帰りの新幹線が、地震のために高崎駅の手前で停まってしまい、襲ってくる余震に縮み上がったのがつい昨日のことのようだ。その後も、世の中には事件や事故、天災や人災が尽きない。そうしたものに巻き込まれて心ならずも命を落として仕舞われる方が後を絶たない。だが、幸い私は元気だ。元気だということは、この地球上で果たさなければならない仕事、天命があるということなのだ、とある大切な方から教えられたことがある。元気であることに感謝しつつ、元気で生かしてくれている大きな力に対し心からの恩返しをしなければならないのだ。そして、それができることこそ私の最大の喜びなのだ。
私の仕事、それは音楽を通して一人でも多くの方々に幸せな出会いを経験していただくことに尽きる。そのために努力することが、なによりも嬉しい私なのだ。コンサートを控えた気分は、まったく素晴らしい。この気分を味わい続けるためにも、健康維持の努力と毎日の練習を怠ってはならないと、いつになく殊勝なことを考えている今夜の私である。
和波たかよし
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