5月31日 来週は田島君がハンガリーでデビュー

 29日はラジオ局のホールからの生放送、そして昨日はユネスコの世界文化遺産にも登録されている由緒ある町、ペーチュでのリサイタルを無事に終え、今日はブダペストに戻って30年来の友人、ドボシュさんのお宅で夕食をご馳走になり、四方山話に楽しい時を過ごした。

 今回のヨーロッパは、もちろん仕事も大切なのだが、コンサートやオペラを聴いたり、友人知人と時間を過ごすことにかなりのウェイトを置いた旅行である。明日からのウィーンでは、さっそく明日の夜キュッヒル弦楽四重奏団、明後日はウィーン少年合唱団を聴く。そして土曜日は、小さなハウスコンサートで演奏を披露することになっている。

 6月5日には、私の弟子で現在ドイツ留学中の田島高宏君が、ハンガリーでデビューする。私の滞在中にこのコンサートが決まったのは全くの偶然なのだが、なんと運の良いことだろう。私はブダペストに戻り、この演奏会を聴く。曲はブラームスの協奏曲、田島君が最も力を入れて取り組んできた、彼の大切なレパートリーである。そして、コンサートが行われるリスト音楽院大ホールは、私自身が12年前に同じブラームスを弾いたホールでもある。

 聴衆として、そのホールで田島君を聴くのは、どんな気分なのだろう。もちろん嬉しく誇らしいことに違いないが、子供っぽい私は「本当は俺が弾きたいのに」と心の中で羨ましがるかもしれない。まあそれは冗談だが、私が聴くことでほんのわずかでも彼をサポートすることに繋がればと願っている。こうした経験ができるのも、長く音楽活動をしてきたお陰である。それを可能にしてくれたあらゆる人たちへの感謝と共に、私はリスト音楽院ホールの客席に入るのだ。

和波たかよし

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