6月6日 田島君の演奏を聴いて
昨夜は、ブダペストで田島高宏君のソロ、宮城敬雄氏指揮ハンガリー放送交響楽団の演奏を聴き、打ち上げの食事会にも出席して、日付が変わってからホテルに戻った。そして今朝は、まだ興奮が冷めやらないのか、早く目覚めてしまった。今日は飛行機でウィーンへ戻る。日本への帰国を2日後に控えた火曜日の朝である。
さて、田島君はその持ち味を十分に発揮して、良い演奏を聴かせてくれた。もちろん、まだソリストとしての経験がさほど多くないし、彼を教えてきた私の立場としては注文したいこともいろいろあるのだが、順調に成長を続けていることを確認でき、彼の将来に向けて確かな手応えが感じられる演奏に大きな満足を覚えた。
こういう場合、私はなかなか客観的に楽しんで聴くことができなくなってしまうのだが、一緒に行ったトリップ夫人は、「とても繊細で主張のはっきりした演奏だと思った。音もとても美しかった」と喜んでくれた。まあ、私への儀礼も含まれたコメントではあろうが、自然な音の出し方、確かな音程など、ヴァイオリニストにとって非常に大切な要素をしっかりと持ち合わせた彼が、音楽の幅を少しずつ広げているのは間違いない。打ち上げに出席したオーケストラのメンバーからも大きな賛辞が送られ、長年彼を教えていた者としては誇らしい気分を味わわせてもらった。今はドイツにいるので、彼と始終会ったり、アドバイスを与えたりはできないが、遠くから彼の成長を見守り、成功を祈りながら楽しみにしていきたいと思う。
今夜は、ウィーンでマウリツィオ・ポリーニを聴く。3月16日にロンドンで聴く予定だったが、3日前にキャンセルされて悔しい思いを味わった。だが、今回は予定通り行われそうである。世界最高峰のアーティストは、今日どんな音楽を私たちに経験させてくれるのだろうか。期待感がふくらむ朝である。
和波たかよし
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