9月11日 掛け替えのない財産

 今年のサイトウ・キネンも、後1日を残すのみとなった。個人的には、楽屋での待ち時間が長くてやや不完全燃焼気味だが、コンサートは毎回大きな盛り上がりを見せている。私も、持ち場が少ないだけに、例年よりは元気に松本暮らしを楽しんでいる。

 それに、今年は何人もの生徒が訪ねてきたので、とても楽しかった。7日は、総合体育館で子供のための音楽会があった。いつもの開場から目と鼻の先なのだが、私にとってはたまにしか訪れない建物なので、一人で会場内を移動するのは難しい。初めは、この日まで妻が居てくれる予定だったが、彼女の生徒の都合で、どうしても外せないレッスンが入ってしまったため、前の夜に帰郷した。そこで、私は長年の弟子であるTさんに救援を頼んだ。彼女は、実家が松本の近くなので、朝早くホテルに来てくれ、3時に私の仕事が終わるまでアシストしてくれた。そのお返しに、私は文化会館内で彼女のレッスンをした。

 翌日は、名古屋からK君が訪ねてきた。昼頃からレッスンをした後、彼は2時からのリハーサルを見学し、それが終わってから一緒に夕食を取って、すこぶる楽しい時間を過ごした。

 今日も、やはり愛知から生徒が来て、レッスンの後で一緒に中華料理を食べた。食事は、一人よりは複数人で食べる方が美味しい。一人でしんねりむっつり食べるよりは、喋りながら食べる方が消化にも良いようだ。

 他にも、今回はお知り合いと食事をする機会に恵まれた。昨日は松本の視覚障害者協会の会長さんご夫妻と食事をしたし、今日は長年のお知り合いがコンサートを聴きに来られ、6年ぶりに一緒に夕食を取った。

 多くの知り合いがあるというのは、本当に掛け替えのない財産だ、と最近しきりに思う。孤独でないということは、まったく素晴らしい。人と会えばいろいろな話をし、こちらの世間が広がる。普段レッスンや練習、演奏などに追われて、つい人とお付き合いする時間が少なくなってしまうのだが、こうしてちょっと時間のあるときにいろいろな人と会ってコミュニケーションを深めることができるのは、本当に有り難いことだ。これからも、寸暇を惜しんで人とのコミュニケーションをなるべく多く取れるようにしたい、と強く思った。

 仕事の間、メンバーの人たちはそれとなく私の行動に気を配りながら、しかし上手に無視してくれている。困ったときや助けが必要な時は、必ず近くにいる人が手伝ってくれるが、うるさく干渉されることは決してない。私にとって、これほど居心地の良い場所はないと思えるほどだ。今回は良いパートナーにも恵まれたし、言うことなしの日々であった。

 そんな満足感をかみしめながら、私は一人、ホテルの部屋のデスクの前に座っている。明日は、妻がコンサートを聴きに来て、一緒に東京へ帰る。孤独の夜は、これで終わりだ。私にとって最も掛け替えのない財産である妻との再会も、もうすぐだ。

和波たかよし

 日記トップページへ戻る

ページトップへ


このページの音声データ・文章・写真等、内容に関する著作権は和波たかよしに帰属します。他のメディアへの無断転載はご遠慮下さい。