11月30日 今年も後1ヶ月

 もう11月が終わってしまう。なぜこうも時の経つのが早いのだろう、とまた愚痴が出てくる。ついこの間、正月を祝ったばかりなのに、もう「クリスマス・バッハシリーズ」が目前に迫っている。いったい俺はこの1年何をしたのだろうか、と恐ろしい気持ちにさえなってしまう。だが、こちらの気持ちには関わりなく、地球はどんどん回る。寒さに向かって、風邪など引かないように注意しながら、とにかく頑張るしかない。

 今月は、義理の伯父が亡くなるという悲しい出来事で始まったが、嬉しいこともあった。16日の読売新聞に、私たちのCDの好意的な批評が載ったのだ。4枚組のため、値段がかなり高く、ちょっと心配していたのだが、今のところ売れ行きはまずまずのようだ。私たちのベートーヴェンを、多くの方々が聴いて下さるようにと願っている。

 18日には、日本点字図書館主催の「みんなの集い」で「本間一夫文化賞」の授賞式があった。「視覚障害者の文化向上に寄与した」と認められ、今年が第3回に当たるこの賞をいただいたのである。「点字楽譜利用連絡会代表としての活動も評価された」とのことだが、これはただ代表をやっているだけで、まだほとんど仕事はできていない。できたとしても、それは運営委員の皆さんの力であり、私の活動とは言い難い。だから、点譜連のことを言われるとくすぐったいのだが、私の活動全般が認められたのだと考えて、素直に喜ぶことにした。本間先生には、子供の頃からずっと温かく接していただき、私の音楽活動にも不快理解を示して下さっていたので、その先生を記念する賞がいただけたのは、やはり嬉しいことだった。

 他に、ヘレンケラー・コンクール(盲学生音楽コンクール)の審査や、点譜連の運営委員会、さらに、高校時代の恩師の傘寿と喜寿のお祝いもあって、今月は視覚障害の仲間との会合が特別に多い月となった。そういえば、「日常サポートから最先端機器まで」と銘打った視覚障害者のための大がかりな機器展、サイトワールドを見に行ったのも今月のことだった。まるっきり一人で、錦糸町の開場まで出かけていったのだが、駅から開場まで、そして場内の案内を多くのボランティアの方々が引き受けて下さっていて、誰にも気兼ねなく思う存分にいろいろな機器を触ってみることができた。

 私のお目当ては、ポケットサイズの点字電子手帳。これはまだ試作品で、発売は来年の春以降になりそうだが、私は待ちきれなくて首がちぎれてしまうかもしれない。今使っている電子手帳は、とても性能がよいのだが、重いのが玉に傷。名古屋へ行く時など、「もう少し軽い製品が出ないか」といつもいつも思い続けていたのだ。今度の製品は、やはり小さいだけに、機能的にはやや劣るものになるかもしれないが、とにかく楽しみである。

 ところで、最近の私は、気分転換に携帯電話で遊ぶゲームにはまっていた。「インフィニティー2」というもので、目が見えなくても、Iモードを読み上げてくれる音声携帯電話でかなり遊べた。9月から、毎月ほぼ2千円をかけて遊び、自分のキャラクターを育ててきたのだが、ここへ来て急に空しく感じるようになった。今撤退するのは早すぎるかもしれない、とは思ったのだが、通信料を抑えたいこともあり、今夜退会の手続きを取った。ちょっと惜しかったが、仕方がない。あまり遊んでいる時間はないし、たとえさほどの大金でなくても、無駄遣いは許されない。電子手帳のような高額の買い物もするのだから、普段は慎ましく暮らすべきなのだ。

 とは言っても、遊び好きの私のこと、また何か面白いものを見つけてはまってしまうかもしれない。視覚障害の仲間の中には、任天堂のゲーム機を買って、音を頼りに遊んでいる人もいる。まあ、60代のおじさんにはそんな人はいないだろうが、私もことによったらそこまでのめり込むかもしれない。でも、時々思う。何が本当に楽しいのだろうかと。

 パソコンを操るのは私の大きな楽しみだが、今のように、プログラムの原稿の締め切りが迫って、いやでもパソコンと向き合わねばならぬとなると、もうパソコンから逃げたくなる。絶対にいやにならないことと言えば、食べることと寝ること、そしてかろうじてヴァイオリンの練習、ということになるだろうか。今はバロック楽器の練習にかなりの時間を割いているが、聴いて下さる皆さんに新鮮味溢れるバッハをお届けできるよう、磨きをかけていきたいと思っている。

和波たかよし

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