7月29日 八ヶ岳で元気をもらって
昨日松本を出発した妻と私は、八ヶ岳サマーコースのレッスン場となる義父の山荘に移動した。早速別荘会社、泉郷の総支配人を訪ねて、コース期間中のさまざまな事柄について打ち合わせを行った。
泉郷のような別荘地は、夏が書き入れ時だ。特に8月初めからお盆休みが終わるまでは、すべての貸別荘が満杯となり、宿泊費も特別に高い料金が設定される。だが、1985年当時の泉郷の社長は、このピークの時期にサマーコースを開催することを認めてくれ、通常の半分近い料金で参加者を宿泊させてくれたのである。
しかし、最近はじわじわと料金が値上げされ、しかも毎年のように「お盆休みの後に開催してくれたら、もっといろいろな面でサービスができるのだが」とほのめかすようになった。要するに、平たく行ってしまえば、8月上旬の開催は会社の経済にとっては重荷だ、ということなのだ。それは私たちにもよくわかるのだが、8月後半は、ほかにもあちこちで音楽祭や講習会が開かれ、生徒を奪い合うような形になってしまう。また、私のもう一つの大切な仕事であるサイトウ・キネン・オーケストラと日付が接近するので、コースで疲れ切った後もほとんど休みが取れなくなってしまう。だからなんとか上旬の開催を続けさせてくれるよう説得してきたのだが、ついに今年は、会社に押し切られる形で8月後半の開催を決意した。参加者が幾分減少したのは、おそらくこの時期の問題が大きかったのではないかと思われるが、参加者に今以上の負担を強いることはできないと考えた、苦渋の決断であった。
しかしそのお陰で、2003年以来4年ぶりに、これまで何回となくコンサートを開いてきた泉郷内の「プラザフォレオ」で、締めくくりの「ヴァラエティーコンサート」ができることになった。一方、初日に行う「室内楽の夕べ」は、長坂コミュニティーステーションの主催公演となり、サマーコース&コンサートの歴史に、新たなページが刻まれることとなった。昨日は、参加者の確定人数などを会社側に伝えて貸別荘の予約をお願いした他、コース参加者のための最寄り駅からのバスの運行なども依頼し、併せて期間中のいろいろな問題について話し合い、確認し合うことができた。会社側としても、基本的に私たちのサマーコースには協力的であり、こちらはここでコースを開かせてもらえることに感謝しつつ、できる範囲で最良のことを実現するために努力するしかないと思っている。
ところで、私がこの土地でのサマーコースの開催に強くこだわるのは、やはりレッスン場を提供してくれた義父の心に応えたいという気持ちが強いからに他ならない。23年前にこの山小屋を建てた時、義父は私が山で講習会をやりたいとの夢を持っていることを知って、「そういう時には使わせてやろう」との思いやりから、広めのリビングを設計してくれたのだった。時には、多くの聴講者ですし詰めになってしまうこともあるが、私はこの山荘が大好きだ。ここへ来ると、なんだか良い音楽が生み出せそうな気がしてくる。
最近は義父母が年を重ねて、あまり頻繁に訪れなくなったため、妻はくたくたになりながら掃除に精を出した。私も少しは手伝うのだが、あまりやることがないので、こちらは涼しい八ヶ岳での週末の休暇を楽しむ形となった。だが、この滞在は素晴らしい栄養を、私の心に与えてくれた。ここでなら、元気にサマーコースがやれるに違いない。そう確信が持てたのだ。毎年多くの参加者と苦楽を共にしてきたこの場所で、できるだけインスピレーションに満ちたレッスンをし、皆に音楽の素晴らしさを伝えていこう、そう心に誓ったのだった。
ここの空気は、私に元気をくれる。そして、私がこれほど好きな場所を、きっと参加者も気に入ってくれると信じる。慣れない人との共同生活はストレスも少なくないだろうし、レッスンを受けたり聴いたり、炊事をしたりという日々は、かなりハードなものになるだろう。でも、そこから何か素晴らしいものが生まれるのだと信じて、皆にはできるだけ積極的な気持ちでこの勉強の機会を活用して欲しいと願っている。明日は東京に帰り、木曜日から室内楽のリハーサルも始まる。サマーコースに向け、私の体と心はフル稼働を開始する。
和波たかよし
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