8月3日 快い忙しさ

今日は、まずまずの1日であった。昨日の練習が、だいたい私の計画通りにうまく行ったのでほっとしたこともあり、精神的に余裕のある気持ちで過ごせた。不思議なもので、同じことをしていてもそれが平気でできる時と、ひどく億劫に思えてやりたくない時がある。できることなら、いつも前向きで何でも楽しくやれる自分でいたいが、これがなかなか難しい。

 しかし今の私は、物事を億劫がっていられる余裕はない。いつもの「夏の忙しさ」がやって来るのだ。八ヶ岳サマーコースとサイトウ・キネン・オーケストラ。厳しい日々が続くが、これは私にとって最も快い日々でもあるのだ。

 サイトウ・キネンで演奏する「幻想交響曲」の楽譜が早々と6月中に届き、点訳も完成した。後は私がそれを暗譜するだけなのだが、これが大変である。今年はサマーコース終了からサイトウ・キネンまでの間が数日しかないので、コースが終わってから暗譜、などと考えていたら絶対に間に合わない。八ヶ岳へ行く前に、譜読みだけは終わっておかなければならない。今は暑くて、あまり根を詰めて仕事をするのに適した季節ではないが、そんなことを言って怠けているわけにはいかない。

 夏休みは、サマーコースを除けば生徒のレッスンは少なくなるし、もちろん毎週の名古屋通いもないわけだから、自分の勉強にはたっぷり時間が取れる。遊び心を封じて、当分は八ヶ岳とサイトウ・キネンノために頑張らなければならない、としきりに自分を戒めている。

 昨日は、8月18日の「来たの杜サマーコンサート」の初めてのリハーサルを行った。私の元の弟子で、2003年からサマーコースのアシスタントを勤めてくれている田島高宏君が、今回はヴィオラを受け持つ。先月28日にドイツから帰国し、成田から直接ヴィオラを貸してくれる店へ行って楽器を手にし、翌日から練習を始めたと言うが、なかなか見事に弾いて私を安心させてくれた。サマーコンサートの出演が5回目となるチェロの林詩乃さんも、すでに気心の知れた「仲間」である。彼女の本拠はアメリカだが、今は日本との間を行ったり来たりの生活である。

 実は、妻の美寧子も加えた4人のメンバーで演奏するのは、2000年以来7年ぶりになる。前回はフォーレのピアノ四重奏曲を演奏した他、当時サマーコースのアシスタントをしてもらっていた小川由紀子さんも加わってドビュッシーの弦楽四重奏曲を弾いた。田島君は大学4年生、もちろん私の門下だった。ある日彼を夕食に誘い、「八ヶ岳のコンサートで君と共演したいのだが、ヴィオラを弾いてくれるか」と相談した。ヴァイオリン奏者である彼にヴィオラを頼むことは、かなりの負担になるとわかっていたので、私としても熟慮を重ねた末に話したのだったが、彼はすんなり引き受けてくれ、素晴らしい演奏で応えてくれた。林さんは、1998年の「日本室内楽コンクール」で2位に入賞した時、審査員としてその演奏を聴いてすっかりほれ込み、ぜひ八ヶ岳で共演したいと狙って誘っていたのが、この時実現したのだった。伸びやかな歌と美しい音を持つ彼女は、他の人の音楽の方向を理解して、しっくり解け合いつつ曲を進めていくすべを心得たチェリストなので、音楽作りがとても楽しいのだ。

 7年ぶりにこのメンバーで音を出した時、「ああ、俺はこの時を待っていたんだ」と背中がゾクッとした。久しぶりに合わせても何か通じ合うものがある、と感じたのは私だけだっただろうか。この日の練習は5時間を超え、かなり疲れた。遠くから練習に来てくれた二人も、さぞ疲れたことだろう。田島君が他の仕事で多忙なため、次の練習は11日からとなる。長坂の本番が、今から楽しみだ。

和波たかよし

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