11月8日 グラズノフの協奏曲

 今、愛知県芸で教えている曲の中に、グラズノフのヴァイオリン協奏曲がある。一昨日のレッスンの時、私はそれを弾いている学生に思い出話をした。
「これは、僕のデビュー曲なんだよ。高校3年の時、日本音楽コンクールで1位になり、翌年、斎藤秀雄先生が日本フィルの定期を客演指揮されることになって、僕をソリストに使うと言ってくださったのだ。ブラームスをやろう、とのお話しだったが、僕の先生だった江藤俊哉先生が反対だと言われ、それでグラズノフになった。僕はブラームスがやってみたかったけれど、先生は絶対だったから、グラズノフで納得したし、これを弾いたことが素晴らしい思い出になっているんだよ」と。

 昨日の朝、来年4月20日に行われる「日本ライトハウスチャリティーコンサート」の曲目が決まった。今度も澤和樹さんの指揮する千里フィルとの協演で、前半が「のだめ」でおなじみのベートーヴェンの交響曲第7番、後半が上述のグラズノフと、私がコンサートマスターを勤めるR.コルサコフの「スペイン奇想曲」、そして澤さんとのデュエットで、来年が没後100 年となるサラサーテの「ナヴァラ」という、楽しいプログラムである。グラズノフをオーケストラと弾くのは、なんと28年ぶり、1980年にライプツィヒ・ゲヴァントハウスの定期演奏会で、クルト・マズアの指揮で演奏して以来だ。学生たちに教えながら、自分ももう一度弾いてみたいとずっと望んでいた曲だけに、本当に楽しみだ。

 そのグラズノフの祖国、ロシアへ出かける日が迫った。ロシアも15年ぶりで、どんな体験ができるのかとわくわくする一方で、不安も数知れない。飛行機と列車を乗り継いで行くクルスクというのは、どんな町だろう。ホテルは快適だろうか。インターネットはどうやらできそうもないし、しばらくの間はネット社会と切り離された生活を送ることになりそうだ。その間に、何か問題は起こらないだろうか。生徒たちのこと、母のこと、心配の種は尽きない。

 だが、心配していても始まらない。電話は通じるのだし、滞在は1週間程度と短い。楽しいことだけを考えて、ロシアを味わってこよう。グラズノフの協奏曲のように美しく、温かい出会いが訪れることを願って。

和波たかよし

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