11月9日 アウトリーチコンサート
今年の秋は、さいたま市の文化振興事業団の主催で、「アウトリーチ・コンサート」と称してさいたま市内の小学校を訪れて演奏する仕事を引き受けた。去年から始まった企画で、去年はピアノのコンサートを行ったが、今年はヴァイオリンも、ということで私に白羽の矢が立ったらしい。1983年からほぼ毎年、およそ10年にわたって、主に東北地方の小中学校を回る仕事をしていたが、それ以来久しぶりに、いくつもの小学校を訪ねる機会を持った。
事業団の担当者が周到な準備を進め、私たちにも学校側にも、良い環境を作ってくれているので、コンサートは毎回順調に行われ、子供たちは静かに、そして熱心に耳を傾けてくれた。演奏が終わると、児童の代表が「お礼の言葉」を述べてくれるのだが、特に低学年の児童が、原稿も読まずに自分の言葉でお礼を言ってくれるのには感激した。
私たちの希望で、どの学校も低学年と高学年に分けて2回公演を行った。少しずつ曲目を変え、低学年はおよそ40分、高学年は1時間のコンサートにしたのだが、このようにターゲットを絞ったことも、集中力を切らさずに聴いてもらえた原因だったのではないかと思う。第1回の9月20日は恐ろしく暑い日で、半袖シャツでも汗をだらだらと流しながら弾いたが、今日の5回目のコンサートではスーツを着用した。季節はどんどん移っているのだ、と実感する。
これまでは、全校生徒が400 人から800 人ぐらいのところで演奏し、会場は体育館だったが、今日訪れた学校は、全校生徒が60人余りと極端に少なく、音楽室で聴いてもらった。人数が少なくても公平を欠いてはいけないと考えて、今日も2回公演を行ったが、演奏終了後に全員と記念撮影をするなど、和やかな雰囲気で、こちらも子供たちとの時間を楽しんだ。演奏の合間には、ヴァイオリンがどのようにして音を出すのかとか、生演奏とCDの違いとか、「人間は言葉以外にもコミュニケーションの手段を求めて、このように美しい音楽を生み出したのだ」といった話をし、時には私の視覚障害にもふれて、「音楽は目で見ることができないが、見えない者の中にも面白い者がたくさんあるんだよ」などと話したりもした。妻の美寧子は、学校に置かれた小さなピアノで苦労するケースもあったが、毎回短いピアノソロの曲を疲労し、二人でけっこう楽しく仕事をした。
学校の体育館という、必ずしも恵まれた環境ではない会場でのコンサートを楽しくやれたのは、なんといっても私たちと学校の間を取り持ってくれた事業団の方々のお陰である。深い感謝の念と共に、音楽と出会った子供たちに、明るく希望に満ちた将来が開けていくことを願いつつ、小学校での仕事を終えた。
和波たかよし
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