12月24日 モンソロ五重奏団を聴いて
今日は、穏やかなクリスマスイブだ。私は、金曜日頃から少々体調が悪く、ちょっと弱気になりながら、それでも発表会直前のレッスンをなんとかこなしていた。そして今日は、ようやく元気を取り戻し、爽やかな気分で過ごしている。
午前中は、イザイの無伴奏ソナタ、第4番を練習した。42年前、ロン=ティボーコンクールの課題曲として取り組んだ懐かしい曲だ。もちろん、それから何度も、数え切れないほど弾いてきたが、2月に全曲演奏を控えて、新たに出版された楽譜による自分自身の解釈の見直しを行っている。大きな修正はないが、指使いなどはいろいろと変えてみようと思っている。
今日は、最近聴いたとても美しいヴァイオリンの音をイメージしながら練習していた。それは、一昨日の夜に東京文化会館小ホールで聴いた「モンソロ弦楽五重奏団」の第1ヴァイオリンを受け持つ、本田早美花さんの音である。10年ほど前、彼女は私の生徒だった。発表会でも、確か2回か3回弾いていると思う。帰国子女だった彼女は日本の高校に受け入れてもらえず、私は自分が教えられなくなることの無念さを感じながらも、パリへの留学を進めたのだった。
その早美花(さみか)さんが、2005年に結成されたこの五重奏団の主要メンバーとして、いわば故郷に錦を飾ったのである。編成もかなりユニークだが、メンバーの国籍も日本、韓国、オランダ、フランスと正にインターナショナルである。ただ、私はもう7年も彼女を聴いていなかったので、期待半分、不安半分で出かけたのだった。
最初のモーツァルトのディヴェルティメントが始まった瞬間、「なんと清潔で美しい音だろう」と、私は心を奪われた。力強さでアピールするのではなく、若々しいきびきびした躍動感と、楽しさに満ちた表情が好ましかった。
2曲目は、ブリテンの「シンプル・シンフォニー」だった。早美花さんが小学生時代を過ごしたイギリスの音楽を、どう表現するかに興味があったが、青年期のブリテンの作品を率直に、爽やかに演奏した。第3楽章のややセンチメンタルな歌と、子供たちが飛び跳ねているような修学賞との場面転換の面白さも秀逸であった。
そして最後は、ドヴォルザークの五重奏曲。作品のどこか家庭的とも言えるほのぼのとした温かみが、ヴァイオリンやヴィオラからふんだんに聞こえてきて、心が温まった。緩叙楽章では、二人の女性ヴァイオリニストたちが作り出す美しい世界を、ヴィオラ以下の男性陣が温かく受け止めて、心の通い合う音楽作りがほほえましかった。
アンコールには、コントラバスのレミー・ユルザリの編曲によるピアソラ、チャイコフスキー、ドビュッシーなどの小品が次々に演奏され、アンコールとしては異例の長さだったものの、彼らの素顔をかいま見る楽しさが味わえた。音楽の基本をしっかりと身に付けたうえで、若者らしい思い切りの良さで個性的な音楽作りを目指す彼らのアンサンブルには、ヨーロッパからの「新しい風」を強く感じさせられ、爽やかな喜びと共に家路についたのだった。
本田早美花さんと言えば、私がこの日記ページを始めた頃の生徒である。1999年の9月に、私は「公私の別」というタイトルで書き込んでいるが、実はここで述べているのが彼女のことなのだ。当時からとても上手だったのだが、長くイギリスに住んでいた彼女とはいろいろと考え方の違いもあり、ときには悩まされることもあった。だが、そうした「自我」が、素晴らしい実を結びつつあるのを大変嬉しく思った。あの音の美しさは、忘れがたいものである。今度は、ぜひソロかピアノとのデュオで聴きたいものだ。
和波たかよし
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