2008年1月4日 今年の抱負

 今年の正月は、物理的にも精神的にも、かなりゆっくり休むことができた。私は、何かにつけて「決意表明」が好きな人間なので、よく自分に向かって「今年はもっと明るく前向きに」とか「時間を有効に使って」などと抱負を述べ、実行しようとするのだが、これがなかなか難しい。今年も、新年を迎えるに当たっていろいろと過去を思い直し、反省したり決意したりした。それがどこまで実行できるか、今のところはまだ、楽しみである。

 まず演奏の面では、2005年に還暦を迎えてから急に依頼が減ったことが、私の気持ちを曇らせている。芸術の世界に年齢などは関係ないはずなのだが、やはり世間は若者の演奏の方を好むのかもしれない。その風潮を変えさせるのは難しいだろうが、とにかく一つ一つの仕事で「私の音楽」をしっかりと打ち出し、それに共鳴してくれる人を増やす以外にないと思っている。

 去年は、演奏回数が久しぶりに増加したが、その主な原因は、さいたま市で実施された小中学生向けの「アウトリーチ・コンサート」を引き受けたためであった。しかし、子供たちに音楽を聴いてもらう機会は非常に大切だし、今回はきちんと準備されたコンサートだったので、朝早く出かけなければならない点を除けば、楽しく演奏できた。学校にも喜んでいただいたし、子供たちからの反応も上々であった。今後もチャンスがあれば、このようなコンサートも積極的に行っていきたい。

 目下のところは、1月27日の福田を皮切りに名古屋、東京と続く「イザイ生誕 150年記念リサイタル」である。イザイの無伴奏ソナタは、実に面白い。その面白さをストレートに表現できるよう、いろいろと考えながら練習している。

 26才で、私が無伴奏ソナタ全曲演奏を行った頃は、まだまだイザイを弾く人が多くはなかった。だが今は、おそらく年に何回かはこのプログラムによるヴァイオリン・リサイタルが、日本のどこかで開かれているだろう。そうした中で、私らしい特色を出しながらイザイを味わっていただこうというのが、今回の企画である。自分がイザイのどこに引かれているのか、漠然と「面白い」というだけでなく、具体的な面白さを自分でしっかりと把握し、そのエッセンスを、イザイの持つ柔らかくエレガントな雰囲気に包み込んでお届けしたいと考えている。

 現在、練習で心がけているのは、なるべく弓を強く張らないこと。これによって、きりきりした堅い音ではなく、ふっくらと柔らかい響きが得られると思う。技巧的に難しいので、どうしても叫ぶような激しい音になりがちなのだが、そこをどう柔らかい響きにするかが、私の工夫のポイントである。

 指導の方でも、いろいろと考えなければならないことがある。私は、自分が理想とするヴァイオリンの音や音楽表現を、できるだけ生徒たちに伝え、それを試すと共に、なるべく実行してもらいたいと思っている。それがなかなかわかってもらえないケースもあるのだが、「自分のやりたいようにやるなら、なぜ私の指導を受ける必要があるのか」と思ってしまうのだ。だが、すべての生徒が私の思うとおりに演奏してくれるわけではないし、伝えたいことがなかなか伝わらないことがあるのも事実だ。そんな時、私はついつい力んでしまうのだが、もっと柔軟に、「一歩退くこと」も取り入れながらの指導の方が、効果があるかもしれないと考え始めている。

 ヴァイオリンを弾く技術はけっこう難しいし、自分の音を正確に聴いて是正することは、もっと難しい。それらのことを少しでも身に付けてもらおうと、私のレッスンはどうしても細部にこだわったものになりがちだ。最初は細かいところまでちゃんとできるように教え、仕上げの段階では曲を大きく掴んでもらうように、レッスンでの力点の置き方を変えているつもりだが、その切り替えが、生徒によってはうまく行かない場合もある。全員が私のペースで学んでくれる、というわけではない。それは当然わかっていることなのだが、つい夢中になってしまうのが、私の欠点であるように思う。

 私のレッスンが好結果を産んでいる、と思いたいのは当然のことだ。生徒だって、良い結果を出したいに違いない。だからどうしても、できるまで注意し続ける、といったレッスンに傾くのだが、目先の結果だけを追い求めず、伝えるべきことをしっかり伝えていく姿勢も必要だろう、と痛感している。これでも、昔の生徒に言わせると私はずいぶん丸くなったそうだが、もっと自分にも生徒にもストレスがかからず、楽しく建設的な雰囲気の中で音楽が伝えられたら、どんなにか素晴らしいことだろう。それが、今年の抱負である。

 どんな1年が待っているのか楽しみだが、できることならあまり悲しいことやいやなことには出会わず、音楽との幸せな関わりをいっそう深めていける年となることを願っている。

和波たかよし

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