3月27日 春休みの私

 もう3月も終わりだというのに、私は今月に入って一度も日記ページの書き込みをしなかった。これは「怠慢」以外の何物でもない。お恥ずかしい限りである。

ただ、私は元気だし、大した変わりもなく暮らしている。春休みはレッスンが少ないので比較的余裕があり、それで気持ちがゆるんでしまったところはあるのだが、21日には清里でフランクやフォーレのソナタなど、フランス音楽を演奏して、集まったお客様に喜んでいただくことができた。前日にかなりの雪が降ったため、ドライブに不安を感じた方々がキャンセルされたりで、幾分寂しいコンサートになったのだが、シリーズはまだまだ続く。来年の春には清泉寮の新しい建物が竣工する予定で、コンサートも新ホールに場所を移す。演奏する私たちも、ひときは楽しみである。

 ところで、私は「イザイのコンサートが終わったらパソコンの交換を考えよう」と決めていた。新しいOSであるVISTA が発売されて1年、私たちが「音声出力」に頼って使っているソフトも、ほとんどが対応するようになり、VISTA を使ってみたいという思いが、日ごとに強くなっていたのだった。とは言っても、私はパソコンでそれほど多くのことをするわけではない。こうしてネットに書き込んだり、いろいろな情報を得たり、音楽を聴いたり、点字の電子手帳と繋いでデータをやりとりしたり、その程度である。だからXPでも特に支障はないのだが、やはり新しいものを使ってみたい。パソコンの性能だって良くなっているに違いないからと、ネットで注文したのが2週間前のこと。

 ところが、妻に見ていてもらってパソコンのセットアップをし、どきどきしながら音声スクリーンリーダーをインストールしたら、ちゃんとしゃべってくれない。いろいろ設定を変えて、何とか必要なことを読み上げてくれるようにはなったが、どうも動作が不安定で、時々黙ってしまう。これでは、いつも機嫌の悪い奥さんと一緒にいるような感じで、憂鬱になってしまう。そこで、妻のために半年前に購入したパソコンと交換することにし、先週の日曜日から、ようやく念願のWindows VISTA を使い始めた。

 これは、CPUもしっかりしているし、メモリーも十分なので、音声が安定しており、反応も早い。昨日は、これまで5年近く愛用してきたパソコンを、業者に買い取ってもらい、別れを告げた。今、私は一つの欲望を満たし、幸せな気分で文字を書いている。手に伝わるキーボードの感触も、これまでとは違って新鮮なものを感じる。機嫌良く交換に応じてくれた奥さんに感謝しつつ、しばらくはこのパソコンと仲良く付き合っていきたい。

 これは、私にとって、新しいパソコンを使っての初めての書き込みというわけだ。こんなことで喜んでいるのはまるで子供みたいだが、それが私の実態でもある、と認めざるを得ない。パソコンに向かっている時が、楽しくて仕方ないのだから。

 そんな子供のような私も、音楽のこととなるといろいろこだわりがあり、生徒にもついつい厳しいことを言ってしまう。先日も、「君はそんな演奏を聴かせるためにはるばるやって来たのか)と言っ てしまった。「もっと能力があるはずなのに、それを使い切っていない」ともどかしいのだ。でも、言ってしまった後で「可哀想なことをした」と後悔する。また、「自分の演奏は大丈夫か、ちゃんと弾いているか」と自問自答する。そうした日々の中で、今私は、4月20日に弾くグラズノフのコンチェルトと格闘している。

 次の日曜日、30日には、セシオン杉並で「日本盲人会連合音楽家協議会」の演奏会がある。主に箏曲の先生方が、社中を率いて全国から集まって来られる。邦楽の演奏は、午前11時半から午後4時までと盛りたくさんだ。だが、視覚障害者の中には、洋楽に携わっている人も少なくないのだし、せっかく首都圏で開催される機会でもあるので、今回は邦楽だけでなく、洋楽の部も加えてはどうかと提案し、それが受け入れられて4人が演奏することになった。私も、長年の会員として、ボランティア出演を決心し、美寧子とスプリングソナタを弾くことにした。響きの良いホールだから、楽しみながら弾いてきたいと思っている。

和波たかよし

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