3月31日 3月最後の夜に

 3月最後の夜を迎えた。今月は、ゆっくり春休みを満喫するつもりだったが、何となく心に余裕が持てないまま、時が流れてしまった。体調にも波があり、元気な日と不元気な日が交互に訪れるようだ。

 昨日は、朝早く夢にうなされたりして、十分な睡眠が取れないままに起きた。そして午後は、スプリングソナタを演奏したのだが、弾くことを楽しむつもりだったのに、そんな余裕がないまま終わってしまった。邦楽の演奏から、休憩を挟んで洋楽に移ったのだが、邦楽は緞帳を使うため、完全な反響板をセットすることができず、ホールの響きがあまり利用できなかったのも残念だった。リハーサル無しの本番だったので、何となく場所になじめないような安定感のなさを心に抱きつつ演奏した。

 だが、私の前に演奏した二人のソプラノ歌手は、なかなか良かった。澤田りえさんは、すでに演奏や指導に活躍している人だが、昨日はドニゼッティのアリアを熱唱した後、ヨハン・シュトラウスの「春の声」でコロラトゥーラの腕前を披露した。また、芸大生の橋本夏季さんはヘンデルのアリアを、よくコントロールされた声で落ち着いた味わいを出しつつ歌った。去年ロシアのコンクールで、視覚障害の声楽家を何人も聴いたが、日本にもレベルの高い声楽家が育ちつつあるのを頼もしく思った。

 終演後は、全国から集まった邦楽の方々と共にディナーに出席。視覚障害者の集まるパーティーでは、一人一人マイクを回し、一言ずつスピーチするのが半ば習わしになっているが、昨日も懐かしい人たちの声をたくさん聴くことができた。盲学校時代の先輩や後輩、地方へ演奏会に行った時に歓迎して下さった箏曲家の方々など、久しぶりにお会いする方も多かった。笑い声の絶えない楽しいディナーで、私も美寧子も、心和む時を過ごさせてもらった。

 明日からは4月だ。いよいよ私の好きな季節になる。今日は寒かったが、明日は良い天気になりそうだ。1週間後には名古屋への通勤が始まるし、その前に、日曜日には1年ぶりの「雑司ヶ谷音楽堂」での演奏がある。去年は、和気藹々の雰囲気で、実に快いコンサートだったが、今年も多くの方々が集まって下さることを願っている。昨日とは違い、リハーサルもきちんとやるので、余裕を持って、楽しく弾きたいと思う。

和波たかよし

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